One House

私たちはこの家を設計するにあたって「小さい」けれど「広い」住まい という、一見矛盾する二つの目標を掲げた。
最初に家を小さくしたいと考えたのは、コストを抑えることが目的だった。今回の規模ならば同じ床面積でも、平屋や2階建てに比べ、階高を抑えた3階建てを選択した方が、基礎や屋根が小さくて済む。外気に接する建物の「表面積」も小さくなるので、コストだけでなく、冷暖房に必要なエネルギーも抑えられると考えた。
けれども家が小さいからといって、室内が狭くなっては意味がない。外壁・窓・そして屋根を充分に断熱した上で、室内にいくつもの小さな吹抜けを作った。断熱された厚い外皮の内側に、多孔質のインテリアが内包されたイメージである。7mに迫る、驚くほど天井の高い部分や、隣りの部屋越しに周囲の庭まで視線が抜ける場所もあり、立体的につながった室内は、数字上の面積以上の広さを感じられる。
構造体をあらわしにした天井や無着色のセメント板の外壁、無垢のタモ材を使用したフローリング、木の下地材を組み合わせた手摺壁など、One Houseで使用されている材料に飾り気はないが、耐久性が重視されていて、時に職人の丁寧な手仕事の結果でもある。これらの材料を、私たちは設計者として住空間に期待する本質に基づいて選択し、One Houseをデザインしていった。
1階に設置した蓄熱暖房機からの輻射熱は、構造をあらわしにした薄い床や、各所に設けた小さな吹抜けを通して、1階だけでなく2階・3階まで暖める。1階のキッチンと、3階の子供室で互いに声を掛けあうこともできる。
「様々な居場所を持った立体的なワンルーム」が、この家のコンセプトであり、かつ、これからの住宅の高断熱化がもたらす理想的な住空間の一つのあり方をも示していると考え、私たちはこの住宅を「One House」と名付けた。

名称:One House
施主:個人
所在地:長野県松本市
用途:戸建住宅
面積:164.44m2(車庫除き137.42m2)
竣工:2011年7月
基本・実施設計:カスヤアーキテクツオフィス(粕谷淳司・粕谷奈緒子・村田裕紀)
監理:カスヤアーキテクツオフィス(粕谷淳司・粕谷奈緒子・村田裕紀)
構造設計:小西泰孝建築構造設計(小西泰孝・千葉俊太)
照明デザイン:ソノベデザインオフィス(園部竜太)
施工:松本土建株式会社(高木時浩・山本千晶・宮澤昌弘)
撮影:カスヤアーキテクツオフィス

Project name: One House
Client: Personal
Project site: Nagano, Japan
Function: Private House
Size: 166.44m2
Design & Supervise: Atsushi+Naoko Kasuya, Yuki Murata(KAO)
Structural Design: Yasutaka Konishi, Shunta Chiba (KSE)
Lighting Design: Ryuta Sonobe(Sonobe Design)
Contractor: Matsumoto-Doken Co.,Ltd.(Tokihiro Takagi, Chiaki Yamamoto, Masahiro Miyazawa)
Photo: Atsushi Kasuya(KAO)